不育の原因は、「リスク因子」「母体高年齢」といったことがあげられます。
参考:不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究
http://fuiku.jp
リスク因子
妊娠初期の流産の約80%は胎児(受精卵)の偶発的な染色体異常が原因とされていますが、 2~3回以上流産を繰り返す場合は、両親が、リスクが高まる「リスク因子」を有している場合があるので、検査をお勧めします。 なお、「リスク因子」を有しているからといって100%流産するわけではないので、「原因」ではなく「リスク因子」と表現しています。
参考:反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル p.9
■夫婦染色体異常
流産を繰り返す場合は、夫婦どちらかに染色体構造異常がある可能性が高くなります。
その場合、夫婦とも全く健康ですが、卵や精子ができる際に染色体に過不足が生じることがあり、流産の原因となります。
ただし、流産の原因の約80%は偶発的に発生した染色体異常ですので、
2回の流産歴のある方は、80%×80%=約64%、3回の流産歴のある方でも、80%×80%×80%=約51%というように、
染色体異常を偶然繰り返すことも多く、大半は、両親には特にリスク因子がないことがわかっています。
検査をして、リスク因子が見つからなかった場合は、安心して次回の妊娠に臨んでください。
■子宮形態異常
参考:反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル p.12
双角子宮・中隔子宮といった子宮の形態異常がある場合には、着床の障害になったり、胎児や胎盤を圧迫して、流産・死産を繰り返すことがあると考えられています。
子宮の形態異常では手術を行うこともありますが、 手術の有効性については十分に解明されていない場合があります。主治医の先生とよく相談して決める必要があります。
なお、子宮に形態異常があるからといって、そのために赤ちゃんにも形態異常が遺伝するということはありません。
■内分泌異常
甲状腺機能亢進・低下症、糖尿病などでは、流産のリスクが高くなります。これらの内分泌疾患では、早産などの参加合併症のリスクも高いため、 妊娠前から妊娠中にかけて、良好な状態を維持することが重要です。
■凝固異常
抗リン脂質抗体症候群、プロテインS欠乏症、プロテインC欠乏症、第XII因子欠乏症などの一部では、
全身の血液が固まりやすくなり、動脈や静脈に血栓、塞栓症を引き起こすことがあります。
特に血液の流れが遅い胎盤のまわりには血栓を生じやすく、胎盤梗塞により、流産・死産を繰り返すことがあります。
母体高年齢
母体のリスク因子とは別の原因として、高年齢があげられます。卵巣内の卵子は、生まれてから総数が増えることはなく、加齢に伴って染色体異常を引き起こしやすくなるためです。
現時点では、卵子の老化を止める方法は無いため、流産を繰り返された方は、できるだけ早くリスク因子の検査を受け、次の妊娠に向けて準備をすることが勧められます。
母体年齢 | 日本(2008)[1] (n=1,091,156) |
不育症 (n=2,361) |
BMJ誌[2]による 流産率 |
---|---|---|---|
~ 19歳 | 1.4% | 0% | 13.3% |
20 ~ 24歳 | 11.4% | 1.1% | 11.1% |
25 ~ 29歳 | 29.1% | 14.1% | 11.9% |
30 ~ 34歳 | 37.1% | 33.8% | 15.0% |
35 ~ 39歳 | 18.4% | 36.5% | 24.6% |
40 ~ 44歳 | 2.5% | 13.3% | 51.0% |
45歳 ~ | 0.06% | 0.9% | 93.4% |
参考:反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル p.10
[1]日本(2008)のデータは、出産年齢の分布を表しています。不育症のデータは症例登録時の年齢です。
[2]BMJ320: 1708-1712, 2000