2026年2月2日(月)、緊急避妊薬がOTC化(処方箋がなくても薬局で購入できる)されます。いまのところ、全ての薬局という訳にはいきませんが、取り扱いできる薬局は厚生労働省のサイト「緊急避妊薬販売店舗一覧ページ」で確認できます。
わが国に緊急避妊を導入するため尽力した、北村邦夫会長が隣にいるのですから、
お話を聞かなくては!
そう思い立ち、「緊急避妊薬の、OTC化を巡って」と題してインタビューしました。
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日本では2026年2月2日にOTC化がスタートします。 わが国への導入に最初から関わり、時に戦ってきた専門家の一人として、率直にどのように受け止めていますか |
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緊急避妊のOTC化については、それぞれの団体や個人にはいろいろな意見があることを承知していますが、2016年から9年、結論が出るのが遅きに過ぎた感を否めません。
ピルの審議も承認まで44年かかりましたから、日本という国は、女性が妊娠する、しないと自分で決めることに消極的な国なのかなぁと・・・ (北村邦夫著「ピル承認秘話~わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)」 薬事日報社) |
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緊急避妊薬のOTC化が必要であると考える理由を教えてください |
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女性にとって妊娠、特に計画外の妊娠は、人生において重大事件になりかねません。その意味からは、緊急避妊薬は最後の避妊法としてとても重要です。 しかも緊急避妊薬は可能な限り早く服用することが重要であるわけで、薬局などアクセスしやすい環境を整備することが大切です。もちろん、医療機関受診の道を閉ざすわけではなく、医療機関と薬局とが有機的な連携を図る必要があります |
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服用(購入)に際し、年齢制限は不要ですが、販売する薬剤師や、診察する医師はそれぞれどのようなことに留意する必要があると考えますか |
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クリニックでもしばしば経験することですが、若い世代には、背後に暴力などの問題が隠されていることが少なくありません。
そのため、私などは、緊急避妊を求めてきた女性が診察室に入る時から、首に絞められた跡がないか、リストカットはないか?など瞬時に見極めることを忘れていません。
そんな緊張感をもって緊急避妊薬が処方されていることをご存じでしたでしょうか? 性交同意年齢が16歳未満になってはいますが、そんなことお構いなしで暴力を続ける相手がいる以上、年齢制限などもっての他なのです。 むしろ、他の国がそうであるように、十代の女性には無料で緊急避妊薬を提供できる福祉的サポートがわが国には必要なのです。 緊急避妊薬のOTC化を進めるということは、それに伴う不測の事態に対処できる教育体制や福祉政策を整備することを急ぐ必要があります。 |
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暴力が話題になったところで、性犯罪被害の場合、都道府県ごとに内容や手順に違いはありますが、緊急避妊薬や性感染症検査、時に中絶費用などを補助する制度があります。 OTC化がスタートしても適用されるのでしょうか? |
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残念ながらOTCで処方された場合、現在実施されている費用の公費負担はありません。
この場合は医療機関に連絡して、相談するのがよいと思います。 とはいえ、同じ薬なのに手に入れる場所によって、行政のサービスに違いがあることは本来の目的からはずれてしまうので、関係機関で検討することになるとは思います |
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承認に向けた検討会でも話題になった「面前服用」について、先生はなぜ必要だと考えますか。 不要であるとの声も聞かれますが、どのような状況が整えば見直しの余地があるとお考えですか |
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理由はいくつかあります、例えば・・・
※「なりすまし」がありました。診察室でやり取りする中で、どうしても来られない友人の代わりであることが発覚したのです。 ひとまず帰っていただき、改めてご本人に来院いただいたことがあります。 ※彼が妊娠の継続を現段階では決めかねているので、持ち帰りたいといった女性がいました。「結論はいつ出るの?」と聞くと「分からない」と。ご本人は妊娠の継続は無理だと思っているのですが、一縷の望みを彼にかけていたのでしょうか?時間ばかりが経ったら避妊効果が落ちることを説明し、処方できないとお断りしたことがありました。 ※彼女が仕事で忙しいとの理由から、男性が取りに行っていいかとか、「相手がどうしても産みたいと言っているが、僕には自信がない」と服用を女性に強要する危険性があるかのような事例もありました。こうなると「転売」「悪用」の懸念が広がります。 このような経験をしているので、面前服用が必要だと思われます。緊急避妊薬は、早く服用すればするほど避妊効果が高いことを考えても面前服用が重要なのです。どういう条件が整えば面前服用が不要になるか、性教育の普及、本人確認と記録制度の整備、アフターケア体制の充実といった条件が社会的に整えば、将来的に面前服用を不要にする議論も可能になるに違いありません |
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OTC化がスタートすると、今後何が問題になると考えますか |
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これは米国の例ですが、緊急避妊薬の服用経験を有する女性が増える。 ひょっとすると男性用コンドームの使用率やピルの服用率が減る。 大袈裟に申し上げれば、緊急避妊薬がコンドームやピルと同じように一般的な避妊法になっていく可能性があるのではないでしょうか |
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緊急避妊薬について「スタートであってゴールではない」とよくおっしゃっていますが、この点について、特に「スタートである」ことの意味合いを教えてください |
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妊娠は女性にしか起こらない現象です。ですから避妊については女性が主体的に取り組める方法を、性感染症予防にはコンドームをと訴え続けてきました。
コンドームが破れた、外れた、腟外射精など日本の場合、男性に避妊を任せてしまっている女性にとっては、緊急避妊薬を必要とする場面に直面することが、とても貴重な経験になると思われます。
この経験を無にすることなく、ピルなどより確実な避妊法選択へと意識を変えていってほしいと強く願っています。 「経験にマイナスなし」という言葉がありますが、緊急避妊薬を必要とした経験を次につなげていってほしいものです |
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私がマイナスなしだな~と感じたのは、緊急避妊薬を求めて思春期外来に来られた方が、渋々ピルを始め、結果として確実な避妊と、生理に振り回されない生活を手に入れ、クリニックと長く関わるうちに、子宮頸がんの検査で、早期発見ができました。そんなこともありましたよね OTC化に際して、性教育の必要性や利用者に緊急避妊薬に関する正しい情報を伝えることの重要性についてどう考えますか |
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性交同意年齢が16歳になった以上、それまでに性交とは?性的同意とは?性交に伴う妊娠や性感染症、避妊法などについては、十分に習得できるように学校教育を通じて努めていただきたい。 緊急避妊薬については、その授業の中で当然話題にする必要があります。緊急避妊法については「知らないのは愚か、知らせないのは罪」と言われているのですから。 したがって、中学の保健体育では「受精・妊娠までを取り扱うものとし、妊娠の経過を取り扱わないものとする」いわゆる「はどめ規定」をなくす努力が求められています |
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最後に、このページを読んでくださっている方に向け、メッセージをお願いします |
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緊急避妊薬はあくまで「緊急避難的対応」と考えてください。 必要に応じて緊急避妊薬を服用することは大切ですが、性行為が行われる可能性があるならば、その結果としての妊娠や性感染症予防のことを常に念頭に置いて、緊急避妊薬に頼るよりも前に、ピルなど女性が主体的に使える避妊法と男性としてはコンドームを使用するなどの対策をとって、幸せな性行為ができるよう願っています。 仮に緊急避妊薬が使われるならば「経験にマイナスなし」という立場から、ピルなど確実な避妊法へとスイッチしていってください。繰り返しになりますが、緊急避妊薬を服用することで妊娠を回避できた、「ああ良かった」ではなく、緊急避妊はゴールではなくスタートだという意識をお忘れなく! |





