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北村所長に聞いてみよう

電話相談にみなさんから日々寄せられる質問・疑問の数々。
なかでも一番多いのがピルについての質問。
今回はピルについてみなさんの疑問に北村所長が徹底的にお答えします。

北村所長に聞いてみよう
Q1 そもそもピルって何?
Q2 ピルの種類と特徴を教えて?
Q3 なぜピルを飲むと妊娠しないの?
Q4 ピルは薬局で買えるの?
Q5 費用はいくらくらいかかるの?
Q6 副作用ってやっぱり心配。太ったりしないの?
Q7 ピルには避妊以外にも効果があるってホント?
Q8 ピルを飲むと、月経はなくなるの?
Q9 ピルを飲んじゃいけないのは、どんな人?
Q10 ピルの正しい飲み方は?
Q11 ピルは飲み始めてすぐに効果があるの?飲み忘れたらどうするの?
Q12 長い期間、飲み続けても大丈夫?
Q13 ピルをやめたら、ちゃんと妊娠できるの?

Q1 そもそもピルって何?
A 1960年に米国食品医薬品局(FDA)で認可されて以来、世界の女性に最も広く使用されてきた「経口避妊薬」がピル。ピルは、卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲストーゲン)と同じ成分が含まれた飲み薬だ。健康な女性が長期間にわたって服用するものだから、さまざまな研究評価の対象となり、多くのデータが集められている。今や世界で九千万人を超える女性に使われている最も信頼性の高い避妊法と言える。

日本では今、避妊効果は同等だが月経困難症の治療薬を含めると、その数は16種類となっている。ピルといえば副作用というイメージを持つ人も多いようだが、広く知られている副作用研究は、高用量ピルの時代のもの。現在、使用されている低用量ピルは、避妊効果を維持できる範囲でのホルモン用量の減量化が計られたこともあり、安全性は飛躍的に改善されている。 ピルは、妊娠を希望するときには、服用を中止しさえすればよいということから、安全性と有効性、確実性の面で高く評価されている避妊法なんだ。
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Q2 ピルの種類と特徴を教えて?
A ピルには、1錠中に含まれる女性ホルモンの量が変わらない「一相性ピル」と、数日ごとに女性ホルモンの配合が変わる「段階型ピル」がある。

「一相性ピル」には、一定量の卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲストーゲン)が含まれ、21日間ピルを飲み続け、その後7日間の休薬期間をおき、これを一周期として繰り返す方法だ。中には、7日間の休薬期間中に偽薬(プラセボ)を入れ、合計28錠を服用し続けるものもある。「一相性ピル」では21錠すべてが同じホルモン配合比であるために、飲み間違いがないのがメリットだ。

もうひとつの「段階型ピル」は、日本には三相性のピルがあり、これは一周期中の卵胞ホルモンと黄体ホルモンを三相に変化させて、全体として、ホルモン用量を減量したものだ。避妊効果については、一相性ピルでも段階型ピルでも大きな違いはないから、それぞれに一長一短があるわけだ。
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Q3 なぜピルを飲むと妊娠しないの?
A ピルは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲストーゲン)という本来卵巣から分泌されているホルモンと同様のものを化学合成しているから、ピルを飲むことによって、血液中のこのふたつのホルモン濃度が高まり、妊娠中に近い体の状態になる。

そこで、脳は妊娠したと錯覚して、視床下部や下垂体からのホルモン分泌を停止するので、卵胞が成熟せず、排卵もなくなる。だから、避妊できるわけ。つまり、ピルは、妊娠中は排卵が起こらない女性の体のしくみを利用して、妊娠するのを防いでしまう薬なんだ。

また、ホルモンの作用によって、ちょうど子宮の入り口に蓋をするような形で、精子の進入を防止したり、子宮内膜に受精卵が着床することが難しくなるなど、複合的な作用によって避妊効果を高める。
ピルは卵巣、子宮内膜、子宮頸管に直接的、間接的に作用して、避妊効果を高めているわけだね。
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Q4 ピルは薬局で買えるの?
A 低用量ピルは、簡単にドラッグストアで手に入ると思っている人がいるが、それは間違い。ピルは必ず医療機関を訪ね、服用に問題がないかどうかチェックを受けた後、処方される。初診以降も、医師の処方箋が必要だ。産婦人科とは限らず、内科などでも処方してもらえる。
しかし、ピルは、
  • 長期間にわたって使うこと。
  • 他の薬と異なり、健康な女性が使用するものであること。
  • 女性ホルモンからなっているという特殊性。
  • ピルの服用後、コンドームを使用しなくなる可能性が高いこと。
などの特徴があるから、性感染症や子宮頸がんの検査は定期的に行うことが大切だ。やはり、ピルを処方してもらうのは、体の具合に異常がないかどうか検査してもらえる産婦人科などの医療機関の方がいいだろう。
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Q5 費用はいくらかかるの?
A 日本では避妊の指導と処方は病気の治療と認められず、ピルは、健康保険の適用がされない「自費診療」なので医療機関によって違う。だから、処方してもらう医療機関に電話を入れて予め経費を尋ねるのがいいだろう。

ちなみに、ボクの所では、保健指導や薬剤費などで初めての時に7千円くらいかかるが、月にならすと2千円程度。安いとは言えないが、望まない妊娠から確実に体を守れることを考えれば高くはないとボクは思う。

それにピルの処方を通して、産婦人科などにかかりつけドクターができ、いろいろ相談したり、アドバイスしてもらえることは、避妊だけではなく、これから将来に向けて、あなたの健康管理にもとっても役立つと思うよ。
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Q6 副作用ってやっぱり心配。太ったりしないの?
A もちろん薬だから、副作用がゼロとは言えない。低用量ピルでは、副作用はきわめて少ないとはいえ、気持ちが悪くなる、吐く、めまい、乳房が張る、頭痛、性器からの出血、消退出血、ゆううつ感などが指摘されている。ただし、これらの症状の多くは、二、三周期(飲み始めて2~3カ月間)で消失するはず。症状が続く場合には、他のピルに変更することが必要かもしれないから、ドクターに相談してほしい。

それと、女性が特に気にする「太る」こと。ピル服用直後には特に黄体ホルモンが体液を貯留させ、確かに体重増加がみられることもあるが、その程度は僅かにすぎない。

多少の副作用はあるけれど「計画していない妊娠から体を守る」というメリットがはるかに大きい。将来、出産を望む時まで、ピルによって「産める体」をキープしておくことは若い女性にこそ必要だというのがボクの持論だ。
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Q7 ピルには避妊以外にも効果があるってホント?
A ピルには、卵巣ガンや子宮体ガンなどを予防したり、月経痛が軽くなる、周期が安定する、貧血が改善されるなどのメリットもある。卵巣嚢腫、子宮筋腫、骨粗鬆症、骨盤内感染症、乳房の良性腫瘍などへも好影響もあると言われている。
たとえば、卵巣ガンに対する予防効果は、繰り返す排卵をピルによって抑制することによって可能になっている。近年、女性の出産数の減少によって、妊娠に結びつかない排卵が増えていることは事実だ。これが卵巣に大きな負担をかけ、卵巣がんの発生を促しているから、ピルを服用することによって、予防効果が現れるわけ。ピルは、女性の体を保護する役割を果たすものだとも言える。

初経の低年齢化、閉経年齢の延長、晩婚化、少子化など女性のライフサイクルをみても、以前に比べて大きな変化が現れている。生殖年齢が延長しているにもかかわらず、妊娠はしない期間がそれにも増して長くなっているんだ。だから、現代の女性たちには、計画していない妊娠や出産はもちろん、女性の健康をも守るピルという確実な避妊法を身につけてほしいとボクは考えている。
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Q8 ピルを飲むと、月経はなくなるの?
A ピルを飲むと月経がなくなると誤解している人も多いようだが、月経はなくならないよ。普通、ホルモン剤をふくむ21錠を飲み終わった2、3日後に月経がある。ピルの飲み始め、少量の出血がつづくことがあるけれど避妊効果には影響がない。逆に稀に月経がないこともあるが、ピルを正しく飲んでいれば妊娠することはない。

ただ、ピルには避妊の効果はあるが、性感染症予防には効果がないことは覚えておいてほしい。エイズをはじめ、クラジミア、淋病、性器ヘルペス、梅毒などの若い人の間で広がっている性感染症(STI)には、予防が大切だ。心配な時には、ピルを飲んでいてもコンドームを使うこと。避妊も性感染症予防も、きちんと自分の責任で実行できなくちゃ、セックスする資格はないゾ。
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Q9 ピルを飲んじゃいけないのは、どんな人?
A 妊娠の可能性がある女性であれば、初経から閉経まで、いずれの年齢であっても使用することに問題はない。十代でも必要ならばピルを使用してよいという考え方が一般的になってきているし、40歳を超えた女性でも、喫煙、高血圧、糖尿病などの問題がない限り使用することができる。ピル服用に伴う心臓血管系のリスクは、健康な女性、非喫煙者、高年齢女性では極めて稀だ。

ただし、ピルを飲むのに注意が必要な人もいる。妊娠している人、かなり肥満している人、家族が血栓症にかかったことのある人、肝障害、心臓や腎臓の病気の人などだ。 また、ピル服用中には他の薬剤の服用に注意してほしい。例えば、副腎皮質ホルモンや抗うつ剤などは、作用が増強することがある。抗生物質や抗てんかん剤などの薬剤を使用すると、逆にピルの作用を減弱させることがある。医師にピルを飲んでいることを必ず伝えて指示を受けるようにしよう。
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Q10 ピルの正しい飲み方は?
A 低用量ピルは「月経の第1日目」から飲み始めるのが原則だ。ピルを初めて使用する際、月経の5日目を超えるようならば、ピルを飲みながらも7日間はコンドームなど他の避妊法の併用を心がけよう。予定月経の時期であるにもかかわらず、月経かどうかはっきりしない出血の場合では、確実な出血をもってピルの服用を開始するようにしよう。通常の月経とは明らかに異なる出血の場合には、ピルの服用をあきらめて医師に相談してほしい。

ピルは、1日のうちのある一定時刻に飲まなければならないというほど厳密であるわけではない。しかし、飲み忘れないことが大切だから、自分の生活時間を考えて、毎日、決まった時間に飲む習慣をつけて、飲み忘れを防ごう。

飲み始めの2、3周期目までは、偽妊娠状態を作るために「気持ち悪い」とか「吐き気」を感じる人もいるので、夕方から夜にかけて服用したほうが影響を少なくできるだろう。食後すぐに飲むことで気持ち悪さが軽くなる人もいるよ。ピルを服用して1時間以内に吐いてしまったような場合には、翌日分を服用することで問題が解決するので心配ない。
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Q11 ピルは飲み始めてすぐに効果があるの?飲み忘れたらどうするの?
A ピルを開始したその日から、妊娠の心配はなくなる。ただし、週末に大量の出血が起こることを避けるために、サンデーピルといって、日曜日からピルの服薬を開始するという方法を取ることがある。この場合には、月経の初日からピルを飲むことができないので、ピル服用前のセックスについてはもちろん、ピル飲み始めの7日間は、コンドームなど他の避妊法を併用するようにしよう。

万が一、飲み忘れた時は、24時間以内に気づいたらすぐに1錠、さらに予定時刻に1錠飲む。したがって、まるまる24時間以上忘れたら、2錠いっぺんに飲むことになる。とにかく、通常の月経に近い出血が起こったときには、新たなシートを開始することも考えよう。ピルを続けて飲みながら、念のため、ピル以外で避妊すべきだ。
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Q12 長い期間、飲み続けても大丈夫?
A 妊娠の可能性がある限り、ピルを使い続けてもかまわない。長い間飲み続けていたからといって悪影響はない。ピル服用開始前から月経が不順であった女性の場合は、月経が再開しないこともあるが、正常な月経周期が確立されていた女性なら、服用中止後、半年以内にはほとんど正常月経が再開すると言われている。

服用中止後6カ月を経ても正常月経が再開しない場合には、ダイエットなどによる体重減少がないか、高プロラクチン血症など内分泌異常がないかなど、医師の診断を受けてほしい。長期間にわたる避妊が必要な場合には、自分のセックスライフを十分検討した上で、子宮内避妊具を使うとか、不妊手術を行うなどを考慮すべきだろう。
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Q13 ピルをやめたら、ちゃんと妊娠できるの?
A 服用したホルモンが体内に蓄積して胎児に悪影響を及ぼすことはないので、妊娠を希望した時にピルを中止すればよい。ただし、ピルによって長期間排卵が抑制されていたこと、子宮の内膜にも影響が及んでいたことなどから、ピルを中止した後2、3カ月くらいは、妊娠を急がず、子宮の内膜が正常に復するのを待つことが大切だと主張する専門家もいる。

また、ピルを使用したからといって妊娠しにくくなることはない。ピルの開始以前に、月経周期の異常があった女性では、ピル服用中止後、無月経になることがあるが、これはピルを服用することで、もともとあった周期の異常が隠されていたと考えるべきだろう。

また、妊娠していることを知らないでピルを飲み続けたという場合には、心臓奇形や四肢障害などが3~3.1パーセント程度に認められたとの報告もあるが、普段でも3~5パーセント程度の奇形が出現することを考え合わせると問題にすべきこととは言えないだろう。
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