Q.43 | 四〇代です。体外受精を何度も受けました。もう妊娠は無理かなと思うのですが、諦められません。体外受精は何歳まで続けられますか? |
Q.44 | 治療に疲れました。もうがんばれません。どうしていいかわからないんです。 |
Q.45 | 夫はまだ治療を続けてくれと言いますが、私はもう限界です。 |
Q.46 | 治療しましたが妊娠しませんでした。夫をお父さんにしてあげられない、両親に孫の顔を見せてあげられないのがつらいです。 |
Q.47 | 子どもを育ててみたいので養子を考えていますが、いろいろと心配です。 |
Q.48 | 子どもがいない分、「何か人に一目置かれることをしなければ」と思い、焦ってしまいます。 |
Q.49 | 子どもがいないので、老後がとても不安です。 |
Q.50 | 治療はやめたのですが、今でも時々つらくなります。これからどうしていったらいいのでしょうか。 |
Q.50 治療はやめたのですが、今でも時々つらくなります。これからどうしていったらいいのでしょうか。
不妊は思い描いていた人生や子どもを失う経験。つらくなるのも無理はありません。これまでのことを語りつくしていきましょう。やがて気持ちが落ち着いて、新しい自分に出会えると思います。 不妊は、存在していたものを失うわけではありませんが、大切な人を亡くした時のように、悲しみや寂しさ、空虚感などに襲われるものです。 それを耐えがたく感じるときもあるのですね。 こんな気持ちが一生続くのではないかと不安になる時期もありますが、私たちの心は不妊に出会ったときの「驚き」から、次のようなプロセスをたどって悩みの「解決」に至ることが多いものです。
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驚き
「両親や祖父母のように自分も子どもをもつと信じていた。まさか、こんなことになるなんて…」 -
否認
「これは何かのまちがいだ。産めないなんてことはありえない」 -
怒り
「なぜ、私たちがこんな目に…」 -
孤立
「不妊だなんて人には言えない。誰にもわかってもらえない。人と会いたくない」 -
自責
「夫(妻)や親に申し訳ない。私と結婚しなければ…」 -
悲嘆
「悲しい。人生に意味を見出せない。からっぽだ」 -
解決
「あるがままでいい、私はよくやってきた。これからの道も見えてきた」
これは「クライシス(危機)の心理」と言われるものですが、人生の中でなにか受け入れがたい衝撃的な出来事に遭遇すると、私たちはこのような心の変遷を経験するようです。
事故や病気で身体の一部や機能を失うなど、いろいろな危機がありますが、子どもを望んでいた人にとっては不妊も危機の一つです。
すべての人がこのすべての心の状態を経験するとは限りませんが、当てはまる部分も多いと思います。
いまは「自責」や「悲嘆」に心が揺れているのでしょうか。
クライシスのゴールは「解決」です。解決の仕方は人それぞれですが、ここでは私たち不妊ホットラインの相談員が共通にたどってきた道をお話ししたいと思います。
まず私たちは不妊体験のすべてを振り返って、語りつくしてきました。
不妊治療について、夫や親や周囲の人との関係について、そして傷ついたこと、憤りを感じたこと、悲しかったこと、嬉しかったことなどを-。
同じように内側に語りつくせないほどの思いが詰まっていることでしょう。
話してみてください。怒っていいし、泣いてもいい。どんなことでも受けとめられ、プライバシーもしっかりと守られている場で、あるがままの気持ちを外に出していくことが助けになります。
つらすぎて忘れ去っていた出来事も思い出されるかもしれません。
話をすることで傷つかないように、人のあたたかいサポートと共感をえながら、時間をかけて無理なく進めていく必要があります。
そしてご自身の経験を一つひとつたどって、欠けたところのない一連のストーリーとして完成させてください。文章にしてもよいでしょう。
それと並行して私たちが大切にしてきたのは、社会通念の縛りから自分を自由にすることでした。
たとえば「産まないのは親不孝」「女は産んで一人前」「子どもをもたない人生は不完全」「子どもがいてこそ家族」「一人っ子はかわいそう、わがまま」などというものです。
私たちはそうした偏狭な考え方から離れて、どんな生き方でも一人ひとりが大切にされるような考え方を身につけてきました。
根拠のない偏見によってつくられた劣等感を一生抱えているなんてナンセンスですね。
その縛りから自分を解き放して、誇りを回復していきましょう。
もう一つ大切なことは、思い描いていた未来を失った悲しみに向き合うことです。
流産の経験があれば「あの時の児が生まれていたら今頃は…」と悲嘆に暮れることもあるでしょう。
子どもと一緒に楽しむ季節の行事、子どもの成長とともに展開する人生の門出や節目。
それらを経験できないという喪失感や、子どもがいたら味わったであろう喜びも悲しみもない、という空しさを感じるときもあるでしょう。
その気持ちもやはり安全な場で語りつくし、痛みを感じつくしていくことです。
すると不思議です。喪失感が少しずつ薄らいで、心の傷も癒されて、気持ちがとてもらくになります。
やがてあらゆる痛みが「自分が不妊に悩んでいたなんて、嘘みたい」と思えるほどに、遠い過去のこととなっていきます。
不安や緊張も和らぐので、子どものいる人とも自然につきあえるようになるでしょう。
(それでも何も変わらないという場合は、不妊以外の問題がかかわっていることが考えられます。)
身近に安心して話せる場がないときは、不妊ホットラインや自助グループ、心理カウンセリングを活用してみてください。
保健所の中には不妊をテーマに当事者が交流できる機会を設けているところもあります。
ない場合は、保健所や男女共同参画センターなどにそうした場をつくってほしいと働きかけることもできます。
それでもなにかの折に、ふと寂しさを感じることがあっても当然です。そんなときは「さびしいと感じる部分もあるよね」と認めてあげましょう。
不妊の悩みを完全に乗り越えることに価値をおかないで、いまの自分と正直に向き合いながら、少しずつ変化していくそのプロセスこそ大切にしてほしいと思います。
自分が心地よい、楽しい、と感じることも生活の中に取り入れていきましょう。やがて再スタートするエネルギーを実感し、希望を見出している自分に気づかれることでしょう。
不妊は思い描いていた人生や子どもを失う経験。つらくなるのも無理はありません。これまでのことを語りつくしていきましょう。やがて気持ちが落ち着いて、新しい自分に出会えると思います。